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Music Story JP Story No.2

小出俊雄 世界に誇れる極上のシンバルをつくりたい

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日本で唯一のシンバルメーカー、小出製作所の社長さんが小出俊雄さんです。世界に誇れる極上のシンバルをつくるために20年以上、休日を返上し、寝ても夢に見るほど弛まず切磋琢磨して納得のいくシンバルを作り上げました。昭和がそのまま残るガラスの引き戸を開けると沢山のシンバルたちがその磨き上げられた金色の表面を誇らしげに輝かせながらお出迎えしてくれます。そして、工場の小部屋からは、若いイケメン社員がシンバルを機械を使ってていねいに叩く音が響きます。
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小出製作所社長、小出俊雄さん

叩いて良い音が出ると本当に嬉しい!

小池さんが、ドラムが趣味の若い社員に60年代に真鍮製シンバルを製造した話をしたことがきっかけで、この日本の地で良い音色のシンバルを素材から開発して創り上げるというプロジェクトがスタートしました。良いシンバルをつくるために特別に開発された金属素材を用い、ピカピカに輝いてきれいな音が出るまで、手や機械で叩いて伸ばす手作業が中心の職人仕事です。開発途中で思いがけない日本合金会社からの素材開発オファーがあって、世界的にも他に例を見ないシンバル専用の素材を作り出す共同研究に発展し、今では納得のいく美しい音色の製品をシリーズで作れるようになりました。

「叩いて良い音が出ると本当に嬉しい!」

と、少年のように目を輝かせて話す小出さんの姿からものづくりにかける情熱が伝わってきます。

小出製作所 その道のり

戦後間もない1947年(昭和22年)に創業した小出製作所は、大正生まれの小出さんのお父様が小学校を卒業して金属加工工場で働き、戦時中に第3航空艦隊本部(奈良県天理市)で整備兵をした経験を元に、兄弟3人で始めた金属加工の会社です。戦時中に金属供出で生活必需品を無くした人々が、こぞって小出製作所が作る鍋や釜を買い求め、製品は作るそばから飛ぶように売れました。

そうしてビジネスは軌道に乗り、1955年(昭和30年)現在の小出製作所のある大阪市平野区加美に工場が移りました。それ以降ずっと同じ場所で金属加工を続けています
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シンバルをハンマーで叩く作業
2代目社長の小出俊雄さんは、1949年(昭和24年)、工場から少し西にあった小出家に一人っ子として生まれました。遊ぶおもちゃは自分で作成するのが当たり前の時代で、幼い頃からものづくりが好きだった小出さんは、小さな木片を細かく組み合わせて戦車などの模型を作ったり、ゴムの力で石を飛ばす木製パチンコを作って遊んでいました。スポーツはというと、近所の子供たちでチームを作って草野球をして育ちました。ポジションは、なんでも来いのオールラウンダーでした。

大阪の高校を卒業して、大学は法政大学の経営学部に入学。初めて親元を離れ、大都会、東京の生活を謳歌しました。小出さんは、学生時代から工場の手伝いをしていたので、違和感なく小出製作所の後継者になろうと考えていました。それを伝えた時、先代社長のお父様はとても喜んでくれたそうです。卒業後はまず、ドイツ北東部にあるアーレン(Ahlen)という街にあるライフェルト(Leifeld Metal Spinning GmbH)という金属へら絞り加工機械会社の工場で3ヶ月ほど研修しました。1970年代前半のことです。へら絞りとは、丸く平たい金属板を回転させながらヘラと呼ばれる棒を押し当てて少しずつ変形させるスピニング工法のことです。小出製作所は、丸いものをつくることを専門とする金属加工の会社で、その会社の機械を使っていたので、この研修は大いに役に立ちました。

しかし、ドイツの工場は、夏休みになると1ヶ月も閉まってしまいます。そこで、その時間を利用し、その頃流行っていたバックパッカーになって、イギリス、アイルランド、フランス、イタリア、ギリシャ、エジプトを旅して見聞を広げました。特に思い出に残っているのは、スコットランドで宿が満員で泊まれず、やむを得ず野宿をしましたが、夏なのにあまりの寒さに一睡もできなかったことです。

それから、日本に帰国し、小出製作所でさまざまな金属部品加工を手がけ現在に至ります。時代とともにご飯を炊く釜が電気炊飯器になったように、作る製品も変わりました。業務用洗濯機やレントゲンの機械部品、照明の反射板など様々な部品を作りましたが、加工賃の競合をしなくても良いように、他社が作れないような新しく、特殊なものへとシフトしてやってきました。​

小出シンバルのはじまり 1960年

そんな小出製作所が、2003年、本格的にシンバル作りに乗り出したのです。

小出製作所のシンバル作りは、前述のように、1960年代後半に遡ります。日本で空前のグループサウンズブームが起きて、楽器を購入する人が増え、小出製作所に大阪のサカエリズム楽器という楽器製造会社から真鍮製シンバル製造の話が舞い込んできました。真鍮は衝撃で曲がりやすい難点があるものの、加工も楽で、何より安価なので初心者向けでした。

たくさんシンバルを作りましたが、当時は日本の製造業の全盛期で、本業の金属加工が忙しくなりすぎたためシンバル生産ができなくなってしまいました。というのは、その時代は撮った写真を自分で印刷することが盛んになり、ネガフィルムの像を拡大・投影し、印画紙に焼き付ける引き伸ばし機の生産が増え、それに搭載するランプの金属部品製造の本業があまりにも忙しくなったのです。それが一段落した後の1979年から2002年まで、同じサカエリズム楽器のリクエストで、オーケストラなどで使うティンパニの銅製胴体部分を作りました。
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小出シンバル

シンバルとは

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ドラムセットとシンバル
シンバルは、比較的薄く伸ばしたつばひろ帽子の形をした金属板を叩くことで音を出す楽器です。そのルーツは3000年ほど前の西アジアに遡り、後にヨーロッパ、アジア、北アフリカに広まりました。14世紀以前にはトルコの軍隊で使用され、17世紀からヨーロッパの音楽で使われ、19世紀以降、シンバルを重用する作曲家が現れたことで大きく広まり、ニーズに合わせて進化してきました。現在では、16世紀のトルコにルーツをもつシンバルが一般的で、ドラムセットの一部として使われるシンバルや、オーケストラ、ブラスバンドなどで使われる合わせシンバルなどが広く知られています。(参考:Wikipedia英語版&日本語版)

小出シンバルのスタート

小出シンバルのスタートは、まずは、シンバル素材分析から始まりました。世界の主要メーカーのシンバルを取り寄せ、大手金属会社で働く銅の専門家だった従兄弟の力を借りて分析しました。

その結果、ほとんどが銅と錫の合金で、少し銀も入っていることがわかり、そういった素材は国内になかったので探し、ようやくドイツやトルコにあることを見つけて輸入しました。そうして、できた製品を大阪のドラム販売会社に持ち込んだところ、気に入ってもらい、販売してもらえることになりました。それが2003年のことでした。ホームページも作成し、東京の打楽器専門店にも採用され、国内の需要が少しずつ増えて行きました。

そんな中で、2007年のある日、一本の電話を受け取りました。
大阪合金工業という福井県の会社からでした。
りんと銅の合金では日本国内で高いシェアを誇る会社で、MRIなどに使われる超伝導素材などの特殊な銅合金を製造しています。その頃開発した超伝導素材の新技術を、他分野でも応用できないかと模索中だったのです。シンバル素材が、超伝導素材とよく似ていることもあり、音楽好きの社員が、小出製作所がシンバル素材提供企業を探していることを見つけ、ホームページをみて連絡してきたのでした。
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小出シンバルのハンマリングの様子

小出シンバルだけのシンバル用金属素材開発

願ってもない話で、小出さんの心は踊りました。
それまでは、使っていた素材は輸入素材で、品質が安定せず、加工途中に割れるトラブルがありました。また、海外のシンバルメーカーと同じ素材なので、苦労して作っても海外製品との差別化がなかなかできないこともありました。「渡りに船」とはこういうことをいうのかもしれません。

まもなく共同研究が始まり、シンバル用板材の製作方法の開発に何度も実験を重ねて2年ほどかかりました。伝統的な素材にとらわれずに新しいシンバル素材を開発して、耐久性向上や、他社製品と異なる音が出る素材開発を目指しました。

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年月をかけて開発された金属素材
2010年からは本格的に大阪合金工業が開発した材料でのシンバルの試作が始まりました。それ以降、大阪合金工業は、福井大学や福井県工業技術センターなどとの共同研究や、専門機器を使っての測定など、高度な合金開発を進めました。
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​シンバル材には、高い濃度のスズが含まれていますが、研究過程で、スズの割合が高まるにつれ音色がクリアできらびやかになることがわかりました。しかし、スズが多くなれば、形を整えることが難しくなってしまいます。そこで、割れにくく、加工しやすい合金を作るため、ジルコニウム、チタンや鉄を添加して強度をあげる研究がなされました。言うと簡単なようでも、実は大変な道のりで、そこまで来るには、なんと、試作品を100通り以上も作ったそうです。そして小出さんたちは、次々と試供される素材を使ってシンバルを作っては試す作業を根気よく続けました。

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音が重なり合わないように音の伸びを抑える(サスティーンが短い)シンバル材作成過程では、最初は聴力に頼る手探り作業が続きましたが、後に大掛かりな計測装置を使って計測ができる様になったこともあり、減衰が緩やかな良く鳴るシンバルと、減衰が速い、つまりサスティーンが短いシンバルの作り分けができる様になりました。現在では、素材の異なる4種類のシンバル材を提供してもらえるようになり、用途の違うシンバル作りができるようになりました。その結果、この共同研究は、2019年、地方発明表彰の中小企業庁長官賞を受賞して、シンバル材としては世界でも例を見ない新しい素材が開発されたのです。

続くシンバル製造工程の改良

素材開発が進む間、小出製作所では、製造工程の改良が続きました。
シンバル製造は、手作業が多く、根気のいる作業です。機械や手でハンマーを使って地金を叩いて引き伸ばし、薄くて音質の良いシンバルに仕上げます。叩いて形ができると、1週間くらい寝かせます。それからあちこちを叩いて音質を確かめ、叩きながら調整していく細かい作業の手順が確立していきました。

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手作業の製品ゆえ、一つずつが個性のあるシンバルに仕上がります。シリーズのシンバルは、耳を使って同じような音にそろえるため、今でこそ、慣れましたが、ここまで辿り着くために、気が遠くなるような細かい調整作業の試行錯誤を繰り返しました。

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細かい溝を作ります
そのおかげで、それぞれのシンバルがちょっとずつ違う世界に一つだけの音色でありながら、シリーズとして似た音質を安定して作れるようになりました。現在は、Absolute、 Brilliant、 Cadenceという3つの異なる音質のシンバルシリーズを作っています。最新のCadenceシリーズのシンバルは、サスティーン(長く伸びる音)を抑えた、クリアでキレの良い音が出るシンバルとなりました。吹奏楽用の合わせシンバルには、あまりシンバルの経験がない人でもきれいな音が出るように工夫されたSensitiveシリーズがあります。全て他社が使わない、高度な技術に裏打ちされた素材で作っているのでユニークな音色が作り出せ、これからの時代の音楽の可能性も広げることに貢献できそうです。それに加えて、小出さんは、このクリアなシンバルの音色は癒しにも使えると考えています。

作る人も演奏する人もワクワクするシンバル

小出さんがこれからしていきたいことは、この多くの人の努力が積み重なってできた小出シンバルという製品を世に広めていくことです。
現在は、まだ月産200-300枚ほどですが、多くの人に助けられて徐々に販路も広がり、アメリカにも取扱代理店ができました。近い将来には、アメリカで開催される国際楽器ショーにも展示して認知度をあげ、世界のたくさんの人に使ってもらえるシンバルにしていきたいと考えています。

また、最近の町工場では、後継者を見つけるのに苦労しているところが多いですが、小出製作所では、若手が3人、長い間、生き生きと働いてくれています。小出さんは、そんな彼らのためにも、次世代のためにも販路をさらに開拓し、作る人も演奏する人もワクワクするシンバルを作っていきたいという意欲に満ちています。
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小出シンバル
(株)小出製作所
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〒547-0006 大阪市平野区加美正覚寺1-22-32
代表取締役 小出俊雄
TEL (06)6791-1824
FAX (06)6791-0128

メール info@koide-web.co.jp

小出製作所   
http://www.koide-web.co.jp/
小出シンバルHP  http://koidecymbal.com​

​取材、執筆: マグワイア由紀子
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